暗号資産(仮想通貨)の税金の計算方法や納税のタイミングを解説

2025/01/09

暗号資産(仮想通貨)の税金の計算方法や納税のタイミングを解説

暗号資産(以下、仮想通貨)取引で利益を得た場合、適切な税金申告が欠かせません。近年、仮想通貨による所得に関する税金の確認が厳格化され、取引記録の保管も重要になっています。売買はもちろん、他の仮想通貨との交換やサービスでの決済など、さまざまな取引において税金が発生する可能性があり、申告漏れには注意が必要です。本記事では、確定申告の要否判断から具体的な計算例まで、仮想通貨投資における税務上の重要ポイントを徹底解説。初めての方でも安心して準備を進められるよう、申告実務に役立つ情報を一つひとつ丁寧に説明していきます。

仮想通貨取引ではどんなときに税金がかかる?

仮想通貨取引で税金がかかるタイミングやその計算のやり方について正しく理解することは、投資を始める際の重要なポイントです。仮想通貨は保有しているだけでは税金はかかりませんが、売買や交換などで利益が確定した時点で課税対象となります。この所得は原則として「雑所得」に分類され、確定申告が必要になる場合があります。

売却や交換時の利益に課せられる税金

仮想通貨取引における基本的な課税は、日本円やドルへの換金時に発生します。例えば、100万円で購入したビットコインが300万円に値上がりした時点で売却すると、その差額の200万円に対して税金が課せられます。また、仮想通貨同士の取引でも課税対象となり、ビットコインからイーサリアムに交換する場合は、交換時の時価と取得価額との差額に税金がかかります。さらに、仮想通貨で商品を購入する際も、保有している仮想通貨の取得価額と決済時の時価との差額について税金を支払う必要があります。

仮想通貨マイニングやステーキングによる収入に課せられる税金

仮想通貨のマイニングやステーキング、レンディングといった取引からの収入にも税金がかかります。無料でプレゼントされるエアドロップと異なり、マイニング報酬としてもらう仮想通貨は、受け取った時点での時価で評価され、課税対象となります。ただし、マイニングの場合は電気代や機材の購入費用などを必要経費として計上できるため、実質的な税金の負担を抑えることが可能です。例えば、月に10万円相当の仮想通貨をマイニング報酬として得た場合でも、関連する電気代や機材の減価償却費を差し引いた金額が最終的な課税対象となります。

NFTや新規格の仮想通貨取引における注意点

最近の仮想通貨市場では、エアドロップやハードフォーク、NFT、DeFiなど、新しい形態の取引が増えており、それぞれに税金の取り扱いが定められています。エアドロップで新しい仮想通貨を取得した場合、取得時点での時価が課税対象となる可能性があります。ハードフォークにより新しい仮想通貨が付与された場合は、売却時に売却額全額に対して税金が課せられます。

NFT取引では、仮想通貨での購入時に支払いに使用した仮想通貨の値上がり益に対して税金がかかります。DeFiにおける暗号資産の交換(スワップ)、流動性提供による報酬、イールドファーミングでの収益なども課税対象です。これらの新しい取引形態では、取引履歴の正確な記録が特に重要となります。

取引日時、取引量、価格、手数料、関連するウォレットアドレス、使用したプラットフォーム名など、確定申告に必要な情報を漏れなく記録しておく必要があります。特に複数の取引所を利用している場合は、取引履歴を一元管理し、適切な所得計算ができるよう準備することが重要です。仮想通貨取引における税金の取り扱いは複雑ですが、正確な記録と適切な申告により、トラブルを避けることができます。

確定申告の要否を判断しよう

仮想通貨取引で利益を得た場合、確定申告が必要になるケースがあります。特に税金の申告漏れは重大なペナルティの対象となるため、自身の状況をしっかりと確認し、適切に判断することが重要です。

仮想通貨収入の申告基準

仮想通貨取引による所得は、原則として雑所得に分類されます。確定申告の要否を判断する基準として最も重要なのが「20万円ルール」です。給与収入がある会社員の場合、仮想通貨取引による年間の利益が20万円を超えると、確定申告が必要となります。

ただし、この20万円という基準は仮想通貨取引による利益だけでなく、副業収入などの他の所得と合算して判断します。例えば、仮想通貨取引で15万円の利益があり、副業のアルバイトで10万円の収入がある場合、合計で25万円となるため確定申告が必要です。

給与所得者の場合でも、給与の年末調整では仮想通貨取引による所得は精算されないため、別途確定申告が必要になります。また、扶養家族として扶養されている場合は、年間所得が33万円以上になると扶養から外れる可能性があるため、特に注意が必要です。

申告準備のポイント

仮想通貨取引の確定申告を適切に行うためには、まず正確な取引履歴の管理が不可欠です。取引所からの取引履歴のダウンロードや、取引ごとの記録をこまめに行い、税金の計算に必要な情報を整理しておく必要があります。特に、複数の取引所を利用している場合は、すべての取引履歴を統合して管理することが重要です。

所得計算のための書類作成では、取引履歴を基に年間の売買損益を計算します。仮想通貨の取得価額の計算は難しいため、freeeなどの自動計算ソフトの利用も検討しましょう。計算方法には「総平均法」と「移動平均法」があり、どちらの方法を採用するかによって税金額が変わってくる可能性があります。一度選択した計算方法は継続して使用する必要があるため、慎重に選択することが大切です。

確定申告に必要な提出書類としては、確定申告書のほか、所得の内訳書や仮想通貨取引の損益計算書などが必要です。これらの書類は国税庁のウェブサイトからダウンロードできますが、e-Taxを利用すれば、オンラインで効率的に申告を行うことができます。

また、税務調査に備えて、取引履歴や計算書類は最低5年間保管することが推奨されます。特に仮想通貨取引は税務署からの注目度が高く、取引金額が大きい場合は税務調査の対象となる可能性が高いため、適切な記録管理が重要です。確定申告の準備に不安がある場合は、税理士に相談することで、正確な申告と適切な税金の納付が可能になります。

仮想通貨の含み益・含み損と税金の関係

仮想通貨取引における税金の大きな特徴として、含み益があっても保有しているだけでは課税されないという点があります。例えば、1000万円で購入した仮想通貨が1億円まで値上がりしても、売却や交換を行わない限り納税の必要はありません。特にサラリーマンの方は、給料以外の所得として申告が必要かどうか、判断に迷うケースが多いようです。

仮想通貨取引での損失発生時の処理

仮想通貨取引による損失は、同じ年の仮想通貨取引による利益とのみ相殺が可能です。例えば、ビットコインの取引で100万円の損失が出ても、株式取引での利益と相殺することはできません。また、損失を来年以降に繰り越すこともできないため、年度をまたぐ取引のタイミングには特に注意が必要です。法人の場合は異なる仕組みが適用されますが、個人投資家の場合、12月に損失が出ている状態で、利益確定を翌年1月にずらしてしまうと、損失分を活用できなくなってしまいます。

税金が発生する取引と申告の注意点

スプレッド(取引価格の差)を含む取引で損失が出た場合でも、年間の売買総額が一定以上であれば確定申告が必要になるケースがあります。特に無料の取引所を使用している場合、取引手数料は低くても、スプレッドが大きくなる可能性があるため注意が必要です。確定申告の要否判断は一見簡単そうに見えますが、取引状況や他の所得の状況によって変わってくるため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。複数の取引所を利用している人は、すべての取引を合算して判断することが重要です。

税金の計算方法を徹底解説

仮想通貨取引における税金の計算方法は、正確な所得計算が基本となります。仮想通貨取引で得た利益に対する税金は、所得額に応じて5%から最大45%の税率が適用され、これに住民税10%が加算されます。ここでは、具体的な計算方法をわかりやすく解説していきます。

所得計算の基本

仮想通貨取引による所得を計算する方法には、「総平均法」と「移動平均法」の2つがあります。

1. 総平均法:

1年間の仮想通貨の購入価格の平均を取得価額として計算する方法です。例えば、200万円で5BTC(ビットコイン)を購入し、その後240万円で5BTCを追加購入した場合、取得価額は1BTCあたり44万円(合計440万円÷10BTC)となります。

2. 移動平均法:

仮想通貨を取引するたびに平均取得価額を計算し直す方法です。仮想通貨の価格変動が大きい場合、この方法のほうが実態に即した計算が可能です。ただし、一度選択した計算方法は継続して使用する必要があり、変更する場合は税務署への申請が必要となります。

複数の取引所を利用している場合は、すべての取引を合算して計算する必要があります。取引所ごとに異なる計算方法を採用することはできないため、統一した方法で所得を計算することが重要です。例えば、億単位の取引を行う場合や、頻繁に売る必要がある場合は、移動平均法が実態に即している可能性があります。

具体的な計算例

仮想通貨取引による税金の具体的な計算例を見てみましょう。給与所得が500万円で、仮想通貨取引で200万円の利益があった場合、まずこれらの所得を合算して総所得金額を算出します。この場合、700万円が課税対象となる総所得金額となります。

次に、各種控除を適用していきます。基礎控除(48万円)や社会保険料控除、医療費控除などの所得控除を総所得金額から差し引くことで、課税所得金額が決定します。この課税所得金額に応じて税率が決まり、具体的な税金額が計算されます。

例えば、課税所得金額が695万円を超え900万円以下の場合、所得税率は23%となり、控除額636,000円が差し引かれます。さらに住民税10%が加算され、実質的な税負担は約33%となります。この計算結果に基づいて、確定申告時に納付する税金額が決定します。

仮想通貨取引における税金の計算で特に注意が必要なのは、損益通算の制限です。仮想通貨取引でマイナスが発生しても、株式取引などの他の所得との損益通算ができません。前章で述べた様に、損失を翌年以降に繰り越すこともできないため、取引を行う際はこれらの点を考慮する必要があります。

また、必要経費として認められる項目(取引手数料、情報収集費用など)は、所得から控除することができます。これらの経費を適切に計上することで、実質的な課税所得を抑えることが可能です。ただし、経費として認められる範囲には制限があるため、不明な点がある場合は税理士に相談することをお勧めします。

仮想通貨投資の税金を抑える対策法

仮想通貨取引による雑所得は、適切な対策により合法的に税負担を軽減できます。特に仮想通貨のような大きな値動きのある投資では、適切な所得計算と経費計上が重要です。ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨取引に関する税金申告では、以下のポイントを押さえましょう。

認められる経費項目

仮想通貨取引所での売買手数料は、最も基本的な経費として認められています。入出金手数料やウォレット関連費用、暗号資産の取引に関する情報収集費用も計上可能です。具体的には、仮想通貨投資の書籍代、セミナー参加費、取引分析ツールの利用料などが該当します。また、DeFi取引やNFT売買に関連する手数料も、取引との関連性が明確であれば経費として認められます。

節税の実践ポイント

仮想通貨取引の所得計算では、総平均法と移動平均法の選択が重要です。頻繁にトレードを行う場合は移動平均法、長期保有が主な場合は総平均法が有利になる可能性があります。特に複数の仮想通貨取引所を利用している場合、取引記録の一元管理と適切な計算方法の選択が税金対策の鍵となります。

仮想通貨取引の税務調査対策

近年、仮想通貨による高額所得者への税務調査が増加しています。特にビットコインなど主要な仮想通貨の価格上昇により、税務署は暗号資産取引の申告内容をより詳細にチェックする傾向にあります。

税金の申告漏れを防ぐ

仮想通貨取引での申告漏れでよくあるのが、暗号資産間の交換取引による利益の見落としです。例えば、ビットコインからイーサリアムへの交換や、レンディング・ステーキングによる報酬も課税対象となります。また、NFTの取引やDeFiサービスでの仮想通貨取引も、適切な所得計算が必要です。

調査対応の準備

税務調査に備えて、仮想通貨取引に関する以下の記録を適切に保管することが重要です:

  • 暗号資産の取引履歴(売買、交換)
  • 各取引所での入出金記録
  • 仮想通貨の移動履歴
  • DeFi取引やNFT取引の記録
  • マイニングやステーキング収入の記録

特に、複数の取引所を利用している場合や、海外の仮想通貨取引所での取引がある場合は、より詳細な記録管理が求められます。暗号資産取引の透明性を確保し、tax.も含めた取引記録を適切に保管することで、税務調査にも適切に対応できます。また、仮想通貨取引に詳しい税理士に相談することで、より効果的な税務対策が可能になります。

まとめ

仮想通貨取引における税金の取り扱いは、一般的な投資とは異なる特徴があります。特に仮想通貨の場合、売買による利益だけでなく、暗号資産間の交換や、ステーキング・レンディングによる収入なども課税対象となるため、正確な所得計算と適切な確定申告が重要です。また、仮想通貨取引による所得は雑所得として総合課税の対象となり、給与所得などと合算して最大55%もの税率が適用される可能性があるため、計画的な税金対策が必要不可欠です。

そのため、日々の取引記録の管理をしっかりと行い、経費として認められる項目を適切に把握し、税金の計算方法を正しく選択することが大切です。特に仮想通貨投資を本格的に行う場合は、税理士への相談も検討しましょう。確実な税務対策を行うことで、将来的な税務調査にも適切に対応でき、安心して仮想通貨取引を続けることができます。なお、税制は毎年のように変更される可能性があるため、最新の情報をこまめにチェックすることもお忘れなく。

矢井田 友暉

理学博士。植物を対象とした保全生態学分野での研究活動と並行し、ブロックチェーンやスマートコントラクトの開発に従事。日本とドバイでWeb3プロジェクトの開発経験を持つクロスフィールドな研究者/エンジニア。

注意事項

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  • 暗号資産(仮想通貨)への投資判断は、ご自身の責任において行ってください。投資を行う際は、取引所の利用規約および取引に関する説明事項をよく読み、リスクについて十分に理解した上で、ご自身の判断と責任において行ってください。
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